kurk board

メモ用紙を貼っ付けるコルクボードです。主に感想・雑文用。感想系はネタバレあるんで注意。

ラブライブ! の評論本読みました。

こちら。

 

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 『runway』という。

 アニメ評論ではかなり有名なこちら(マンガ☆ライフ)のサイトさんが発行された評論本だそうで、去年の夏コミが初出らしい。

 らしい、というのは、そもそも僕は評論系サイトに疎いもので、この評論本はおろか、サイトさんのこともよく知らない。気になるアニメの評論エントリを読むことはあっても、追いかけているサイトさんなどは、ない。

 この本は冬コミの新刊を通販サイトで購入しようといろいろ漁っていたら、偶然見つけたもので、サンプルを見て即購入を決めた。当ブログに上がっているエントリから分かる通り、僕が『キャラクター主体のシナリオ読解もどき』程度の記事しか書けない現状、こういうアニメならではの評論本というものに興味があったからだ。もう少し踏み込んだ記事にするには、どういった視点や見方をすればいいのか、という助けになればと思い購入して、読んでみた。と言ってもそんな固い記事ばかり書く気はないけど。

 

 え? 一緒に買った百合同人も晒せって?

 

 ……。

 

 ハハハ! こやつめ!

 

 さて、その評論本だけれど。

 

 

 まさに『すごい』のひと言。

 

 ラブライブ! に関することが多角的に分析されていて、しかもそれらへの踏み込みがぬかりなく行われている。具体的にどういうことかというと。たとえば、ラブライブ! が持つ『属性』について考えてみる。

 ラブライブ! とは、元々電撃Gsマガジンの『読者参加企画』であり、それが『アニメ』化された。さらに言うと、コンテンツとしては、『アイドルもの』や『学園もの』に分類される。電撃読参企画のご多分にもれず、『漫画』やスマホアプリなどのメディアミックスもされている。

 この二重カギカッコの部分。『読者参加企画』で、『アニメ』で、『アイドルもの』で、『学園もの』で、『漫画』であるというラブライブ! が持つそれぞれの面から分析が行われている。もうちょっと詳しく述べる。たとえば『読者参加企画』の場合、ラブライブ! 以前のベビプリシスプリひいてはストパニがどういった性質や読者に対する視点を持っていたかを述べた後にラブライブ! がそれらと比較してどういったものなのかを鋭く分析している。同様に『アイドルもの』ではほかのアイドル作品との比較がなされていて、つまり、『読者参加企画』、『アイドルもの』がどういったものなのかを分析したのち、さらに、それぞれの系譜からラブライブ! の位置づけや性質を探っていこうという多角的かつ多面的な、意欲あふれる分析になっているのである。

 わかりにくいと思うので一例をあげる。『読者参加企画』におけるそれぞれのコンテンツが持つ時間の取り扱い方について。シスプリストパニがそのエピソードの提示方法から断片的な時間の可逆性を、ベビプリが同じように時間の連続性と不可逆性を持つストーリーだと定義した上で、ラブライブはその両方の側面を持つ、といった具合に分析されている。……いや、これだけじゃ何言っているか全然わからないだろうから、気になったら買ってみてほしい。本当に面白いから。

 そして、もちろん、俯瞰的な分析だけにとどまらず、ラブライブ! というアニメがどうしてここまで魅力を持ちえたかという分析も、映像面や音響面、ひいてはシナリオ面にまで言及しているという信じられないくらいの分析範囲と、そして深度を持っている。

 そして構成もお見事。より大きな背景からより身近な部分へ、つまりラブライブ! を取り巻く広範囲なカテゴリを分析したのちに細かい部分へと移っていく構成をとっている。これは、先ほど述べたように、ラブライブ! がとあるカテゴリの中のどの位置づけにあって、そしてどういう性質を持っているか、というマクロを扱った記事からミクロを扱った記事への移動がとてもスムーズに行われているのである。

 これはすごい。素晴らしい。ほんとに買ってよかった。

 でもそれと同時に、今の時期に読んでよかったと思う。

 この本が出た当時、つまり、ラブライブ! に対する考えがまとまっていなかった夏コミの時に読んでなくてよかったって。

 なぜかというと強烈過ぎるからだ。

 この本は圧倒的な知識と様々な視点によって書かれている。

 読み手がラブライブ! に対してなんの見解も持っていないという前提で、これだけの説得力と分析的な思考を読まされた場合、あっという間にこの本の主張に飲み込まれてしまうだろうから。『runway』に限らず、他の方の記事を読む前には、どんなに矮小でもクソみたいな質でも構わないから自分の考えというものを持っておくべきだ。そうすることによって、答え合わせではないけど、自分の考えと他の方の考えを比較することができるし、そこから学び取ることもできるからだ。たとえば、僕は高坂穂乃果の記事で穂乃果は周りに迷惑をかけることを気にしないキャラだ、といったことを書いたけど、『runway』ではもっと踏み込んで、穂乃果が11話で突っ走った理由を明快にしている。いわく、『好き勝手やるにはそれに絶対につきまとう他人への迷惑を描いた』。いやこれ、本当にそうだよ。なんで気づかなかったよ。あまりの浅はかさに穂乃果の記事取り下げたい! とまで思ったよ。思っただけだけど。

 そういう、自分の至らなさがわかるから、たとえウンコみたいな出来でも整理して書いておくのは重要だと改めて思う。

 さあて。

 ここまで、とりとめもなく書いてきたけど、『runway』を買って最大の収穫は、なぜ僕がラブライブ! のことをここまで好きになったかがわかったことだ。

 この本で、穂乃果のテーマと絡めてラブライブ! というアニメの本質に触れた項がある。ラブライブ! は、好きなことをやればいいよというテーマではあるが、それが無条件に肯定されてはいないということ。

 これだ、と思った。

 僕がラブライブ! のことを好きになった理由はたぶんそれだ、と。 

 はー。他人に自分が『なぜ好きなのか』を浮き彫りにされるのは結構くやしいなぁ。

 と、今日届いた『paradice live』を聞きながら、そう思いました。

 これ絶対ライブの〆に流れるわー(誰でもわかる)。