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メモ用紙を貼っ付けるコルクボードです。主に感想・雑文用。感想系はネタバレあるんで注意。

γ‐ガンマ‐ 4巻で考える『オマージュとは』

 お前まだこの話題引っ張るんだ?! みたいな記事です。
 この話題は、もうこれで終わりだ終わり!
 多少のネタバレを含みます。

 

 

 昨日、『γ‐ガンマ‐ 4巻』読んだんですよ、『γ‐ガンマ‐ 4巻』。
 こちら。

 

γ─ガンマ─ 4 (ジャンプコミックス)

γ─ガンマ─ 4 (ジャンプコミックス)

 

 

 知らない方のためにひと言で説明すると、ヒーローが活躍する漫画です。
 「ハァ?」と思った方は以下の説明もどうぞ。
 「早く本題」という方は「ここから本題です」までスクロールしてください。
 では説明します。
 宇宙人が地球近辺でドンパチやったせいで地球に放射線が降り注いで、さぁ大変。その理由は、放射線が人体に有害だからではなく、放射線を浴びて異能力に目覚めた地球人が悪事を働くようになったからです。――っていう設定にかこつけて、古今東西のヒーローものをじゃんじゃん登場させようぜっていうコンセプトの、ごった煮漫画です。

 本当にもうごった煮。
 悪事を働く側が怪人で、その怪人を退治する側がヒーローと呼びます。なので、『ヒーロー』というか『ヒーローっぽいもの』を片っ端から詰め込んでる感じです。西はス○イダーマンから東はウルト○マン、古くはスー○ーマンから今はプ○キュアまで種々様々。話ごとに新しいヒーローにスポットが当たって、レギュラーキャラクターである主人公姉妹が関わっていくという形式です。
 軍も絡んだヒーローたちと怪人たちの攻防、そしてその合間に主人公姉妹がその周囲の女キャラとの仲を深める描写が魅力です。
 各話ヒーローからレギュラーキャラに昇格、つまり主人公たちと行動を共にするようになるキャラクターもいるのですが、どうしてだか女の子ヒーローばかりです。何者かの陰謀を感じずにはいられません。
 そして4巻末の描きおろしイラスト2枚の百合百合しさ!
 サービス精神旺盛な漫画ですね。
 姉妹百合もいいけどやっぱ同い年百合だよ(本音)。
 さて、ここからが本題です。
 この漫画が扱っているヒーローの範囲は広く、魔法少女のヒーロー(この表現違和感あるな……)とかも出てくるわけです。
 ここで取り上げたいのは、その魔法少女にスポットが当たるエピソードです。
 倒したはずの悪の帝国の大王が復活して、太刀打ちできるのは地球最強のヒーローである魔法少女ミカだけという話です。ヒーローとしての力は残りわずかだけれど、ミカが立ち上がらないと大王を止められません。戦闘へと向かうミカを主人公はとめようとします。この話で一番の盛り上がり場です。以下は、主人公・酉理と魔法少女ミカとの、そのシーンでのやりとりです。

 

ミ「出来れば自分の口からは問いたくない質問をします。センパイは私がいなくなったら哀しんでくださいますか?」
酉「そんなの……そんなの当たり前じゃん! だから今止めてるんだよ! ミカちゃんは大切な後輩だもん!」
ミ「勿体なきお言葉……ありがたき幸せです。それならば私は大丈夫ですよ。私は誰かを悲しませるようなことは絶対にしません。だって……魔法少女は夢と希望を叶えるのですよ(p.42)

 

 おわかりでしょうか? といっても知らない方には何もわからないですね。
 実は、このやり取りの最後のセリフ。下線部分です。これ、某魔法少女アニメの最終回のセリフなんですよね。まるっきり同じじゃないですが似てます。結構話題になったアニメなので僕以外でも気づいた人は普通にいると思います。さらに言うと魔法少女ミカの得物は弓で、そのアニメの主人公も変身後は弓を持ちます。
 似てます。
 「だからどうした、オマージュだろ」?
 まぁ、その通りです。
 僕もそう思いました。
 「あーここパロだなー」っていう感じで特に何を思うこともなく読みました。
 でも、4巻を読み終えてふと思いました。
 そこが問題だったんです。オマージュだと思ったのが不思議なんです。
 言い換えるとこうです。
 どうして僕はこの表現をパクリだと思わなかったのか? が不思議。
 今は、魔法少女の部分だけを例にとりましたが、そもそもこの漫画は僕の知らない作品のオマージュもガンガン入っています。ていうか何知らないオマージュって? 受け手が知らない作品のオマージュってなんなの? それはオリジナルと何が違うの?

 『それはパクリなの? オマージュなの?』
 はぁ……。
 この辺、あまり考えすぎると際限なくなるので説明すっぽかして結論を言います。やっぱりパクリとオマージュの違いって「作る側の姿勢」と「受け手が作品から読み取った前提や印象」などに依るのだと思います。その結論に至った経緯は以前の記事で書きましたので、そこから引用します。

 

「下敷きにすることと、盗作との違いはどこにあるのですか?」
という質問を受けたことがあります。確かにどこで線が引かれるかは大変に難しい。作者がオリジナリティを加えたと思っても、見る人はそう判断してくれないかもしれません。考えた末の答えは、
「作者にうしろめたいと思う気持ちがあるかどうかでしょう」
と答えておきました。結局、作家の姿勢とか力量とかに関わる問題だからです。

 

――ドラマ別冊 エンタテイメントの書き方 1(柏田道夫)から引用

 

 というわけです。(関連記事 ラブライブ! 2期6話の例のシーンについての個人的見解)
 ともかく僕は上記の魔法少女のくだりはパクリではなくオマージュだと受け取りました。
 根拠は、魔法少女ミカのプロフィール欄。この漫画、登場した各ヒーローのプロフィールが幕間に掲載されているんです。生年月日や血液型や身長、好きなもの、嫌いなもの、果てはテーマ曲なんかも載ってます。で、ですね、その魔法少女ミカのテーマ曲にclarisの『pieces』が挙げられてるんですよ。もうここまでくると潔いね。「あのセリフの元ネタは某魔法少女アニメです」と言っているようなものです。作った側はその事実を隠してはいません。さすがに、おおっぴらにもしてませんけど。(作る側の姿勢)
 そして、そのセリフ以外の、魔法少女ミカの設定自体はいろいろな魔法少女ものから着想を得ていると思います。悪の帝国なんて某魔法少女アニメには出てきません。その点からも、ただ単に某魔法少女アニメだけからセリフを持ってきたわけではないということがわかります。つまり特定の作品からだけではなく、幅広くそのカテゴリからの拝借だと感じました。それにこの漫画ってパロ盛りだくさんなんだなって前提がありますからね。(受け手が作品から読み取った前提や印象)

 で、『それはパクリなの? オマージュなの?』ですけど。

 あんまり考えなくていいかと。知らないのならば、オマージュだとかパクリだとか気にする必要もないでしょう。元ネタを知っていたのなら個人個人で判断すればいいかと。もちろん当事者間での著作権問題に関しての判断がどうなるのかはわかりません。しかし、ただのイチ受け手に過ぎないのであれば、目の前にあるものを楽しめればそれで十分かなと思います。何からも影響を受けていないオリジナルなんてないことですし。